ゲームの体験版が試遊コーナーに置かれていたころのお話

 最近のゲームは体験版をネット配信しているそうで、スーファミや初代プレステ及び2などを遊んでいた自分からすると隔世の感があります。まだ私が学生だった当時、体験版はゲームショップの試遊コーナーにあるか、雑誌の付録として販売されているかのどちらかだったように思います。
 その体験版にはまって、製品版も買った思い出深い作品があります。「Devil May Cry」の「1」です。
 主人公ダンテが映画さながらのスタイリッシュアクションで悪魔たちと戦うというゲームで、シリーズは現在5までリリースされている人気作。私はこの「1」の体験版を試遊コーナーで見たときに凄まじい衝撃を受けました。たしか体験版では、黒豹のような中ボス(シャドウ)と戦うところまでプレイできたと記憶しています。
 ロックなBGMに載せて敵の攻撃をかわし、一気に攻撃を叩き込む!!こんな格好いいヒーローになりきれるなんて…と他の人のプレイに感動し、自分が遊びながら「今の自分のスタイリッシュアクションを誰かが見てくれているんだ」という試遊コーナー独特の高揚感を味わったのです。よし、製品版買おう!!と心に決めました。
 もっとも後に製品版買ったら、マグマを吐き出す巨大な蜘蛛(ファントム)に何度も倒され主人公が丸のみにされるというシーンを十数回見る羽目になったのですが……。その分、エンディングにたどり着いたときの感動はひとしおでした。もし試遊コーナーが無かったら、「Devil May Cry」とは出会わなかったかもしれません。

 逆に試遊コーナーのせいで凄まじい恐怖を味わい、もう二度と見たくない、遊びたくないというゲームもありました。「クロックタワー2 」です。ある店の試遊コーナーには操作方法やゲームの概要などが全くなく、何だこのゲームは、となんとなくコントローラーを操作していたら、突如ハサミを持った男(シザーマン)が現れてなすすべのない主人公を…。
 「なんじゃこりゃああ!?」
 主人公のあまりにあまりな最期が、学生時代の私に植え付けたトラウマはすさまじかった。その後しばらく私は一切のホラーもののドラマや映画を見られなくなってしまったのです(「Devil May Cry」はスタイリッシュアクションの魅力が強かったのでギリギリセーフ)。何年か後に「13日の金曜日」や「悪魔のいけにえ」をレンタルで見たのを皮切りになんとかホラーものを少しは見られるようになりました。「バイオハザード」「かまいたちの夜」もプレイできるようになりました。
 しかし「クロックタワー2」だけは駄目でした。その前作「クロックタワー」はTV番組「ゲームセンターCX」に登場したと聞きレンタルで見てみたら、主人公がことあるごとにシザーマンに襲われてなすすべもなく…。
 「なんじゃこりゃああ!?」
 見なきゃよかったと本気で後悔しました。一応ネタバレを伏せますが「車の後部座席から…」と「エレベーターに入った直後…」が新たなトラウマとして大人になった私の脳裏にすりこまれたのです。本当に怖かった!!

 多分今みたいにネットでPR動画やゲームの概要とかを調べられたら、10年以上続くトラウマになることはなかったでしょう。試遊コーナーは私にとって思い出の場所でもあり罪作りな場所でした。

 いい年した大人が昔を懐かしんでるよ、と思うでしょうが、最近たまたま「Devil May Cry」のサントラを買う機会を得て、繰り返し聞いているうちに試遊コーナーの思い出がよみがえった、ということでご勘弁を。

2022年04月09日