エトフォルテ防衛戦線ヒデ! 第42話 波乱の予兆

 謎の男を保護して、2時間が経過した。
 男の治療は、ムーコとジャンヌ、まきなら心の部の面々が担当する。
 その間、ヒデたちエトフォルテの幹部は地球のネットニュースを見て、日本で起きていることを確認した。
 指令室に映し出されたのは、TVニュースのダイジェスト映像だ。男性アナウンサーがこう語る。

 「…来日したクリスティア王国のブロン・ド・クリスティア国王とイリダ王妃の、暗殺をもくろんだと思われる集団が撃退され、4日が経過しました。
 犯人集団は全7人。うち5人は、計画を察知したクリスティア護衛兵の攻撃により死亡。2人が逃走中です。
 ブロン国王とイリダ王妃にけがはなく、日本政府とユメカムコーポレーションを交えた今後の復興支援協議も無事終了。日本政府とヒーロー庁が誇る、数々の新兵器やロボが、昨年に続きクリスティア王国に輸送される予定です。
 国王夫妻は一昨日は特上鰻重、昨夜は和牛ステーキ2.5ポンドに舌鼓。今日は総理とゴルフを楽しみ、サプリメントメーカー特製のハーブ入りマムシ酒を豪快に飲み干していました。
 来週の帰国まで、国王夫妻は日本国内の観光名所を巡る予定です。…」

 映像の中で、恰幅の良いブロン国王と妻のイリダ王妃がゴルフ場で笑顔を浮かべている。そのとなりには高鞠総理。エトフォルテの襲撃に秘密を持っているかもしれない男だ。
 技の部の主任リーゴが呟く。
 「暗殺されかけたのに、遊びに行くとは大した男だな」
 おかみさんことハウナは呆れている。
 「大した男というより、単に遊び好きなんじゃないの」
 ドラクローが場を仕切りなおす。
 「王様が遊び好きでも、なんでもいい。まずはクリスティア王国のことを、みんなで確認しよう。
 ヒデ。クリスティア王国のことを教えてくれ」
 ユメカムコーポレーションにいたマティウスのほうが詳しいと思い、ヒデはマティウスに解説を頼んだ。
 マティウスが説明する。
 「クリスティア王国は、地球とは違う場所からここに“転移”してきた国よ。異世界転移、次元移動。そういうのは、わかるかしら」
 モルルが問い直す。
 「別の星にあった大地が、そっくり地球に移動した。その解釈で間違いないですか」
 「その通り。クリスティア人は『魔術』と呼ばれる独特の能力を持っている。みんなのエトスに近いけど、戦闘以外にもいろいろ使えるみたい。
 さて、クリスティア王国は魔王メノーに襲われて、日本付近に国ごと転移した。
 クリスティア王国に伝わる神器『ティアンジェルストーン』を継承した3人の日本人が魔法少女フェアリンになって、見事メノーを打倒した。それが4年くらい前のお話。
 魔王に襲われて荒廃した国を助けるために、日本政府と有名企業のユメカムコーポレーションが、それからずっとクリスティアの支援を続けている」
 今度はハッカイが質問する。
 「デザイナーよお。政府はともかく、ユメカムとやらがなんで支援を続けてる?」
 「神器を継承した一人が、ユメカムの社長夫妻の子供だからよ。
 チーム名は『グレイトフル・フェアリン』。メンバーは全3人。
 子供の名前は夢叶統子(ゆめか・とうこ)。今は子供の立場を超えて、若手経営者としてユメカムを指揮してる。
 残りの2人のうち、一人は日本政府の国防大臣、素薔薇晴夫の娘である素薔薇椎奈(すばら・しいな)。
 最後の一人は有名格闘家の娘、久見月巴(くみつき・ともえ)。
 素薔薇椎奈の父は、娘がヒーローになったことで、農業大臣から国防大臣に就任したのよ。結果的に、クリスティアへの支援も強化されたというわけ」
 クリスティア王国は複数の島から成り立ち、日本の宮城・福島・茨城沖にかけて広がっている。船を使えば3時間程度で、首都ティアーズがある本島に到着する。それゆえ、日本政府が船を送って支援する流れが自然にできていった。
 カーライルが質問する。
 「子供の会社経営も気になるけど。娘がヒーローだからって、農業大臣が国防なんてできんのか?」
 ヒデは答える。
 「はっきり言って、素薔薇大臣はお飾りだという見方が大半です。日本の防衛はヒーロー庁の雄駆照全永世名誉長官が握っている」
 「確かに。あのおっさん。言ってることとやってることが完全にお飾りな子供オヤジだもんな」
 カーライルの言葉に、それな、と言わんばかりにうなずく指令室の一同。
 ヒーロー庁と天下英雄党の動向は、ネットニュースでみんなが見ている。みんなの意識には、素薔薇大臣は子供っぽい言動をする変なおじさん、通称子供オヤジという印象しかない。
 ヒデは昔を思い出し、ため息をつく。
 「素薔薇大臣。昔はもう少しまともだったのですが」
 信じられない、という顔をするタイガ。
 「あの子供オヤジがまともに仕事している姿なんて、想像できないよ」
 「本当ですよ」
 蕎麦屋だったころ、ヒデは飲食関係の業界誌を店で購入していた。飲食と農業はつながりが深いから、時折政治家特集が掲載される。農業大臣だったころの素薔薇はまともで、誌面で見る彼にヒデはそれなりに好感を持っていた。ヒーローや天下英雄党の良し悪しを別にして、当時の素薔薇は日本の食糧事情改善に懸命に努め、実際に重要な法律を作った人でもある。
 娘がフェアリンになってから国防大臣になり、クリスティアの復興支援を始めしばらくしてから、急に子供っぽくなってしまった。そして現在に至る。
 「お飾りでも、国防大臣はヒーロー庁とつながりが強い。必然的に権力が強くなる。
 権力のうまみを知って、おかしくなったのかも。政治の世界は怖いです」
 ヒデの言葉に反応したのは、ジューン。
 「ヒデ。誠意と責任をもって政治をする人もいる。政治家が権力を得た途端、そろっておかしくなるわけではないわ」
 その言葉に、わかるんだけど…と言いたげな顔で頷く日本人一同。
 ヒデは反省する。物事を一括りにしてはいけない、とジューンは言いたいのだろう。
 政治論はいったん置いておき、ヒデはマティウスに聞く。
 「さっきの暗殺集団について、マティウスさんは心当たりがありますか」
 マティウスは少し考えこんでから、言った。
 「私がユメカムを離れたのは1年位前だから、あとはTVで流れたくらいの情報しかわからない。
 ただ、そのさらに1年前。ブロン国王の兄のバルテス前国王が亡くなったとき、向こうでは結構騒ぎになったと、うわさで聞いた」
 ドラクローが言う。
 「ニュースの王様の前に、さらに別の王様がいたってことか」
 すると、指令室に連絡が入った。
 心の部の病室で、衰弱した男を介抱しているムーコからだ。
 男が目を覚まし、話をできる状態になったという。



 大人数で病室に押し掛けるわけにもいかない。
 ドラクロー、ムーコ、ジャンヌ。そして仮面をつけたヒデが病室に入り、残る幹部たちには船内放送用のカメラで病室の様子を中継することにした。
 病室に入る前に、ドラクローはムーコとジャンヌに確認する。
 「翻訳機の設定、どうした?」
 ムーコが首元の翻訳機を軽く指先で示しながら、答える。
 「異世界の人だから心配したけど、普通に日本語を話してる。そのままで大丈夫」
 「クリスティアにも翻訳機があるのか」
 ジャンヌが、ちょっと困った顔をする。
 「いや。クリスティア語が日本語とほとんど変わらないみたい」
 「どういうことだ、それは」
 「私に聞かれても…。ヒデはなんでかわかる?」
 ヒデは答える。
 「きっと、うわさの『異世界あるある』ですね。僕も初めてですが」
 ドラクローが間の抜けた声を出す。
 「なんだそりゃ?」
 ヒデは解説する。
 「クリスティアに限らず、異世界との交流は地球各地で確認されています。
 ほとんどの場合翻訳機などがなくても、異世界の人は付き合いのある国に近い言葉で話しています。クリスティアの場合は日本語です。なぜかはわかりません」
 昔和彦が、冗談めかして話していた。
 『現代世界の大いなる謎ってやつだ。異世界あるあるは。
 ”なぜ異世界人は、地球上で最初に付き合った土地の言語で話しているのか?”
 どの国の言語学者もお手上げらしいぜ、これ。解明できたら、言語学の賞を取って千年先まで遊べる金が手に入る。あ、千年も生きてられないから俺はつつましく50年分の金でいいや。いつか暇つぶしに解いてみよう』
 ドラクローは腑に落ちない顔をしたが、
 「会話が通じるなら問題ないか」
 あっさり切り替えて、病室に入った。
 
 救助された男は、頭を下げて自己紹介する。
 「私はクリスティア王国首都防衛騎士団に所属していた、グラン・ディバイ。
 エトフォルテの皆さん。私の救助と治療に、感謝する」
 クリスティア王国では、公的な警備・軍事に携わる人間は『騎士』と呼ばれるという。騎士団はエトフォルテなら十二兵団。日本なら警視庁と自衛隊を足したような組織であるようだ。
 死亡したもう一人の男はモンド・ベルジュと言い、王室のボディガードにあたる『近衛騎士(このえきし)』だという。
 グランは疲れを見せるも、タフそうな顔つきにたがわず口調ははっきりしている。黒髪に黒い瞳。見た目には日本人とほとんど変わらない。左頬の傷跡は、彼を歴戦の勇士のごとく見せている。たしかに騎士甲冑が似合いそうだ。
 「君たちのことは、日本のTVなどで知っている。訳あって、1か月ほど前から日本にいたんだ」
 ヒデはグランに質問する。
 「では、私たちが何をしたかも知っていますね」
 「知っている。だからといって、敵だとは思わない。君たちは私を助けてくれた」
 それに、とグランは続ける。
 「私たちの国では、エトフォルテのような体に好感を持つ」
 「どういう意味ですか」
 「私たちの国の神々は、日本で獣人と呼ばれるものに近い。
 主神ユルリウスが作り上げたのが、私たち人間だ。獣は神の使い。人間は神の力にあやかりたいと思い、獣を模した装飾品などを身に着ける。私から見れば、エトフォルテ人は神に近い体だと思う。だから嫌いになどならない。
 それに、君たちは理由もなくヒーローを殺すように見えない」
 へええ、と、ヒデたちは感嘆の息を漏らす。
 とりあえず、獣人だ残虐だ、と今までのように嫌われなかったことに、ほっとした。

 ドラクローが質問する。
 「1か月前から日本にいたというが、なにをしてたんだ」
 グランは答える。
 「ブロンを暗殺する準備をしていた。そして先日、暗殺に失敗した」
 ヒデたちは、ぎょっとする。
 つまり、この男は先ほどのネットニュースで報じられた逃走中の暗殺未遂犯ではないか!
 死んだ犯人が5人で残り2人が逃走中。漁船内で死んだ男と合わせれば、ニュースの人数とも合致する。
 ジャンヌが、ええーっ、と叫ぶ。
 「王様を殺そうとするなんて!?」
 グランは突如、顔を真っ赤にして怒り出す。
 「ブロンは王様などではない!あの男が今、我が国で何をしているか知らないだろう!」
 顔を真っ赤にしているグランに、不快をあらわにするジャンヌ。
 「なんで怒鳴るのよ!」
 「君が事情も知らずにブロンを王と呼んだからだ!!あの、ひどい男を!!」
 ドラクローが怒鳴り返す。
 「あんたの今の態度だってひどいぞ、ドラア!!」
 病室の空気が、3人の怒りで熱く震える。普段穏やかで優しいムーコは、この様子におろおろしている。
 みんなで怒鳴り返したのでは収拾がつかなくなる。ここは冷静に問い直すべきだろう。
 ヒデはグランに、静かに問いかける。
 「知りません。だからこそ、教えてください。
 私たちは自衛のために日本のヒーローたちを殺害せざるを得なかった。そこに、ブロン国王暗殺をもくろんだあなたを救助した。
 私たちは今、日本政府だけでなく、クリスティア王国も敵に回しかねない状況になりました。
 なぜ暗殺をもくろんだのか。クリスティア王国で何が起きているのか。きちんと話してください」
 グランは、必死な形相でヒデたちに訴える。
 「そんな余裕はない!私をここから出してくれ。早く私は帰って、王女様に危機を伝えなければならないんだ」
 相当な焦りが見て取れる。
 ヒデは、もう一度落ち着いた口調で言う。
 「きちんと事情を話してくれるなら、クリスティア王国にあなたを帰す手伝いをしても良いですよ」
 不快を示していたドラクローは、気を落ち着けるように咳払いし、口を開く。
 「グランさんよ。俺はこの船にいるみんなの命を預かっている。今は、あんたもその命の一つなんだ。
 事情を説明してくれれば、国に帰る手伝いをしてもいいぜ」
 ジャンヌも咳払い。
 「医療担当の心の部としても、患者を放っておけない。怒鳴ったことを謝るわ」
 最後に、ムーコ。
 「みんな、あなたのことが心配なんです」
 グランは、ヒデたち4人を見つめる。
 ややあって、頭を下げた。
 「大変失礼した。助けてもらったのに、怒鳴ってしまうとは。
 君たちを信用して、事情を話そう。
 その前に。君たちは、クリスティア王国についてどこまで知っている?」
 ヒデは解説する。
 「4年前、魔王メノーの力で日本近海に転移した、魔術の国。
 クリスティアの神器を日本人が継承してメノーを倒した。
 そして2年前、前国王がお亡くなりになりブロン国王が就任した。こんなところでしょうか」
 ヒデの指摘に対して、グランは頷く。
 「そうだ。私はクリスティア王国首都防衛騎士団にいたが、ブロン就任による体制変更で職を解かれた」
 ドラクローがさらに質問する。
 「なんでクリスティアの神器を、日本人が継承したんだ?」
 「神器を日本人が継承したのは、魔王にとっても我らにとっても想定外だった。その話はとりあえず省略させてほしい。
 私達がブロンを暗殺しようとした理由。それは、前国王のバルテス様が、ほかならぬブロンに暗殺されたから。
 そして、ブロンが我が国を日本に売ろうとしているからだ」
 ヒデたちは、息をのむ。


 グランが説明する。
 「前国王、バルテス・ド・クリスティア様には娘がいる。リルラピス王女だ。
 通常クリスティアでは王位を継承するのは、王の長子と王位継承法で決まっている。
 ブロンは、バルテス国王の弟だ。通常なら王位継承者は王女様で、ブロンは王になれなかった」
 2年前。バルテス前国王が急に体調を崩し、そのまま亡くなった。
 その直後に、遺言状が公表された。遺言状には、娘ではなく弟に王位を譲ること。娘をクリスティア王国東部の重点復興地域の領主にする、とあったという。
 「王位継承法では遺言状が残された場合、法より遺言状が優先される。
 重点復興地域とは、メノーの攻撃が一番激しかった、クリスティア本島の東部から南部の地域だ。
 要するにブロンは、首都から王女様を追い出したのだ。バルテス様に近かった、多くの王国の要人や騎士たちも。これによって、ブロンにとって何もかもが都合よく回り始めた。だから、バルテス国王はブロンに暗殺されたと皆が思った」
 「暗殺の証拠はあるのですか」
 ヒデの質問に、力なく首を横に振るグラン。
 「その当時はなかった。今もない。だが、あまりにもブロンにとって都合がよすぎたから、皆が疑った。遺言状も偽造したのでは、と。だから首都で反乱が起きた。ブロンに鎮圧されてしまったが」
 「あなたも反乱に参加を?」
 「いや。私は王女様のそばにいることを選んだ。少しでも、王女様の力になりたかったのだ」
 口にするうちに、怒りが沸き上がったのだろう。グランは病室のシーツをぎゅう、と強く握りこむ。
 「それから2年間。重点復興地域で人々の暮らしを改善するべく、王女様と私たちは頑張ってきた。
 一方でブロンは、日本から持ち込まれた科学技術で豊かな暮らしをするために、国内各地を乱開発し始めた。その先陣を切ったのが、ユメカムコーポレーション。そして、日本政府がお墨付きを与えてしまった。
 今や我が国は、復興支援の名を借りた侵略を日本から受けている。それを嬉々として受け入れているのが、本来国民を守るはずの王、ブロンだ!!」
 グランの声は次第に大きくなっていく。
 「復興支援の威を借りたブロンの思い上がりは止まらなくなった。己こそがクリスティアの神だと言い張り、我が国の神を廃すると宣言し、ユルリウス神像を壊し始めた!!
 それだけではない。今、クリスティア西部にある島三つを、高額で日本政府に売却する計画、いうなれば密約がひそかに進んでいる。いくら日本と仲良くするためとはいえ、三千人近い島民を追い出して島を売るなど許されるか!!」
 義侠心を抑えられなくなったのだろう。ドラクローも大きな声を出す。
 「許されねえな!!」
 ヒデも同じ気持ちだったが、とりあえず黙っている。
 ムーコが落ち着いた口調で問いかける。
 「それで、暗殺しようとしたんですね」
 パズートは怒りを鎮めるためか、深呼吸して仕切りなおす。
 「そうだ。2年たった今でも暗殺の証拠は見つからない。それでも、ブロンの神宣言と密約を阻止するという名目なら、王女様も私も仲間たちも、国民の賛同が得られると思った。
 暗殺疑惑を抜きにしても、我が国の心を捨てたブロンのふるまいは、もはや許せるレベルを超えていた」
 そして、うなだれるグラン。
 「1か月ほど前。日本人に比較的容姿が近い精鋭を選抜し、私たちはブロンの訪日より前に日本に潜入して準備をしていた。
 だが、エトフォルテが現れて日本政府が混乱。ブロンの訪日予定は大きくずれた。こちらが日本で準備をやり直している間に、計画がばれたらしい。我々の隠れ家にブロンの護衛が現れ、5人の仲間が殺された。当初の計画通りなら…」
 その後グランはモンドと逃げ延び、とある漁港で漁船を盗んでクリスティアに戻ろうとした。が、慣れない操船で航路は大きくずれ、船内でモンドは死亡。グランも力尽きて倒れた。
 結果、漁船は燃料が切れるまで、波風にもてあそばれ出鱈目な航路を進んでしまい、エトフォルテにたどり着いてしまった、というわけだ。
 ジャンヌがあ然となり、呟く。
 「じゃあ、暗殺失敗は私たちのせいってこと?」
 慌てて首を振るグラン。
 「エトフォルテのせいにするつもりはない。あなたたちとクリスティアの事情は無関係。だが…」
 突然、グランはベッドの上で土下座した。
 「無理を承知でお願いする。エトフォルテの皆さん、私をクリスティアに戻してほしい。
 そしてできるなら、王女様のために、一緒に戦ってもらえないか」
 ドラクローが大声を上げる。
 「どらああ!?俺たちにも、暗殺の片棒を担げってのか!?」
 無関係と言っておきながら、あまりにあまりなお願いである。
 ヒデたちは呆れかえってしまった。
 「暗殺の証拠はないが、国内の状況を見てもらえれば、ユメカムとブロンが悪逆非道を尽くしていることはわかってもらえるはずだ。ブロンのせいで歪んだ政治を、ともに正してほしい!!」
 さすがにこれは無理だ。ヒデも断ろうとする。
 「無茶言わないでください。クリスティアの政治を正す前に、この船の修理が必要な状況なので・・・」
 ヒデの断りを無視して、グランは叫ぶ。
 「頼む、頼むッ!!暗殺に失敗したことを早く王女様に伝えなければ、復興地域に暮らす者たちもひどい目にあわされてしまう。
 協力してくれるなら、我々もエトフォルテに力を貸す故、このとおりだッ!!」
 激しい呼吸を繰り返し、土下座を続けるグラン。
 次第に呼吸音がおかしくなる。興奮しすぎて過呼吸を起こしたのだ。
 ムーコとジャンヌがグランを介抱し、ガスボンベを彼の口に当てる。
 「鎮静作用のあるガスのボンベよ。ゆっくり吸い込んで」
 ジャンヌの説明どおり、グランは呼吸を整える。鎮静作用は効果抜群。30秒もすると、彼の瞳は眠りに落ちんばかりに閉じていく。
 眠りに落ちていくグランは、必死に口を動かし、最後にこう言った。

 「お願いだ…、ユメカムを…ブロンを止め…民を、王女様を…助け…てくれ…」




 

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