エトフォルテ防衛戦線ヒデ! 第64話 採掘場解放戦~思わぬ味方と悪夢の証明~

 ユメカムコーポレーションは元々、市民がお手軽価格で購入できる防犯グッズを売って財を成した会社である。ヒーロー第一主義の日本政府の方針に従い、警備用ロボやヒーロー武装の開発なども始めた。
 会社のスローガンはこんなだ。
 『みんなの夢をお守りします。夢よカムカム、ユメカムコーポレーション』
 そんな会社のご令嬢、夢叶統子(ゆめか・とうこ)が4年前、ヒーローの力を手にした。
 ユメカムコーポレーションはヒーロー庁のさらなるお墨付きを得て、超一流のヒーロー支援企業となった。ご令嬢の指示のもと、会社はさらなる拡大を図る。ユメカム製の防犯グッズをガンガン作って、営業部の社員たちがバンバン売り込む。
 クリスティアで監督官と呼ばれる男たちは、防犯グッズを売りこむ営業部の社員で構成されている。見た目も能力も優れたイケメン社員が、あちこちでグッズを実演販売。イケメンが鮮やかにグッズを使い不審者(役のユメカム社員)を撃退するショーを見て、主に中高年女性が喜んでグッズを買っていく。
 会社が大きくなるにつれ、態度も大きくなってきた営業部社員たちは、日本国内でさらなる営業活動を続ける。時には、押し売りともいえる強引なやり方で。
 そして社員たちは活躍の場をクリスティア王国に移し、監督官を名乗る。フェアリンの能力を再現したスマートウォッチをはめ、ヒーロー武装を手にし、異世界の王国を蹂躙する。
 異世界を好き放題できる。日本政府公認のもと。
 ブロンが王になってから約2年。監督官たちは残忍な優越感に酔いしれてきた。しかも今回は、バージョンアップしたマークⅡも支給された仲間もいる。
 リルラピス王女にも、エトフォルテにも負けるはずはない。日本人が文明遅れの異世界人と宇宙獣人に負けるなどありえない。
 今日、採掘場にいる監督官たちと、ヒーロー武装を手にしたブロン派の騎士たちは、そう思っていた。


 だがその優越感も、現実の戦いが始まるまで。


 採掘場から上空に退避したヘリ1号機の中では、ユメカムコーポレーション所属の武装研究者、掘徒出流(ほると・いずる)と彼に従う研究員が、マークⅡのヒーローマスクに備え付けられたカメラから送られる映像を、タブレット端末で見て戦況を分析している。
 ヘリの中には、掘徒と研究員、そしてパイロットの3人だけ。マスクが捉えた映像は、ユメカムが最近独自開発した特殊通信でタブレットに送信される。通常の無線やスマホ通信はエトフォルテのせいなのか妨害されるが、特殊通信はなんとか作動した。おかげでデータは収集できる。
 同じく上空に退避した2号機ヘリから、通信が入る。
 『我々は安全のため上空に逃れたわけだが……採掘場の様子はどうだ』
 掘徒は苦い表情で答える。
 「厳しい戦いが続いている」
 『そうか。早く終わるといいんだが。それにしても、3号機の新入りパイロットは何しに宿舎に行ったんだ?』
 「俺にはわからない」
 新入りのことはどうでもいい。問題は、採掘場側が劣勢なことだ。
 監督官たちは完全に後手に回っている。たのみのグレイトフル・フェアリンは光の魔術を駆使して反撃しているが、エトフォルテとリルラピス派の騎士たちはこちらの連携を分断しつつ、徹底的に攻撃の手を緩めない。しかも久見月巴こと“フェアリン・マイティ”が寝返り、エトフォルテどもを支援している。
 マークⅡを装着した監督官たちも、何人かがすでに殺されている。巨大な鎖鉄球付き棍棒を持ったエトフォルテの大柄な猪風獣人は、鎖鉄球を監督官にぶちかまして吹き飛ばすと、棍棒でダメ押しの一振りを食らわせた。
 デカくて硬い、単純にしてわかりやすい暴力の象徴で死ぬ監督官を見て、掘徒は身震いし歯噛みする。現場にいる監督官たちの感じる恐怖は、倍以上だろう。古臭いと思っていた魔術を駆使する騎士たちも、ひるまず監督官を倒していく。エトフォルテとの連携も、敵ながらうまく取れている。
 このままでは、自分の上司である統子様(フェアリン・ジーニアス)と友人の椎奈様(フェアリン・エクセレン)もやられるかもしれない。


 1年前。掘徒は神器ティアンジェルストーンの複製品の試験装着員をバーストモードで死なせた。
 それから謹慎処分を食らっていたが、しばらくすると統子に復帰させられた。
 「ヒーロー庁が、うちのスマートウォッチの存在を知った。バーストモードを安全に完成させて、実戦データを出せと言ってきた」
 今後天下英雄学院で新たなヒーローを生み出すため、ユメカムの技術を使いたい。マティウス・浜金田が逃げたなら、仕方ない。掘徒を復帰させて完成させろ。ヒーロー庁の指定する変身機能などを追加して。統子はヒーロー庁の指示を、そう語っていた。
 仕方ない、ということは、ヒーロー庁は自分ではなくマティウスをお望みだったということか。
 掘徒は、泣き喚き散らしたいほど悔しかった。
 思い返せば、マティウスは確かに優秀だった。装着者の安全性を重要視した設計で知られる、ヒーロー武装業界における有名人。武装に関する卓抜した知識を持ち、女みたいな見た目でお洒落。しかもおしゃべりで試験装着員の女の子たちにバカ受け。
 外部の武装デザイナーのくせに、俺の立場と仕事と人気を奪いやがって!もともと神器複製プロジェクトのリーダーは、俺だったのに!
 マティウスへの嫉妬に駆られてテストを強行し、試験装着員を死なせた掘徒にとって、これが最後のチャンスだった。成功させなければユメカムでの居場所を無くすどころか、ヒーロー庁から罰を受けかねない。いや、罰どころか殺されるかもしれない。ヒーロー庁が邪魔になった人間を殺すといううわさは、まことしやかに語られる。実際、事故か殺人かあいまいな状況で死ぬ関係者が後を絶たない。
 こうなったら最後の手段しかない。掘徒は同行する研究員に言った。
 「マークⅡのバーストモードと、オートコマンダーを強制発動する!!」
 マークⅡを装着した監督官に、身体強化エネルギー『バースト』を限界まで注入。さらに、戦場から逃げ出さないように体の動きを制限し、最後まで戦わせる『オートコマンダー』を発動する。
 オートコマンダーは、ヒーロー庁が指定した機能だ。監督官たちには『戦闘に最適な身体操作を補助するシステム』として説明してある。この機能があれば、戦闘のド素人でも空手の有段者以上に自動的に戦えるようになる。そして、遠隔地から装着者の動きを強制的に操ることも、可能になる。
 研究員の顔が、みるみる青ざめる。
 「まさか監督官を遠隔操作するんですか!まずいですよ!」
 掘徒は研究員を怒鳴りつける。
 「採掘場の映像を見ろ!みんな逃げの姿勢に入っている。マークⅡの監督官を極限の状態で敵にぶつけるしか、こっちに勝ち目はないのだ!」
 「また安全装置が働かなかったらどうするんですか!!」
 試験装着員の女の子たちが死んだ瞬間が脳裏をよぎる。魔法少女風の衣装に身を包んだ女の子たちが、バースト過剰注入による副作用で心臓を痛め、血を吐いて死んだあの瞬間が。
 今回はきちんとやったから、安全装置は働くはずだ。働くはずなんだ!!
 掘徒は過去を振り切るように頭を振り、もう一度怒鳴る。
 「俺のマークⅡが欠陥品だってのか!俺は大丈夫だ!」
 「あなたのウォッチが大丈夫ではないかも!監督官死にますよ!」
 掘徒は研究員を殴り飛ばした。
 「やる前からマイナスなことばっか言うな!!何もしなければ全員死ぬ!!統子様たちを守れればなんとかなる」
 掘徒は、最悪の場合を乗り切るための言い訳を瞬時にこしらえた。
 「監督官が死んだら、エトフォルテと王女たちのせいにすればいい。マイナスとマイナスをかけ合わせればプラス。責任転嫁のマイナス要素が二つあるから、プラスにできる。統子様はきっとわかってくれる。俺のせいにはならない!!」


 ヘリで危険な会話が繰り広げられる、少し前。
 ヒデとムーコとまきなとジューン。彼らに同行するクリスティア騎士と十二兵団員たちは、乱戦の合間を縫ってヘリコプター発着場付近の山から採掘場に入り込んだ。ヒデたちエトフォルテは仮面を着用し、ジューンもジャケットのフードと自前の防毒マスクで顔を隠している。ユメカムの監督官に素顔を見られると、後が面倒だからだ。
 ヒデたちを除く三方向から味方が採掘場にまず攻め込み、敵の意識を散らす。頃合いを見てヒデたちがプレハブ式宿舎に入り、作業員を保護し脱出用の車両を確保する。そしてもう一つ、大事な物を確保しなければならない。
 なぜか離陸しなかった3号機ヘリの中には、誰もいない。パイロットが作業員の宿舎の中に入っていったのをヒデは思い出す。
 何をしに行ったのだろう。
 敵に乗り込まれないよう、ヘリはクリスティア騎士に見張ってもらうことにして、ヒデたちは宿舎を目指す。途中、ドラクローと交代して戻ってきたアルと合流した。
 あと少しで宿舎にたどり着ける。はやるヒデたちの目の前で、ブロン派の騎士が一人、ヒーロー武装を構えて宿舎に入り込んでしまった。
 建物の中の作業員たちは丸腰。急いで宿舎に向かうヒデたちだが、間に合わなかった。内部でヒーロー武装特有の光線銃の音がギューン!!と鳴り響く。
 次いで男の絶叫。ヒデたちは最悪の事態を予感する。
 宿舎のドアを開けると、騎士が死んでいた。左胸に穴が開いている。
 騎士の死体の前には、昨日殴られていた熊のような大男作業員と、彼にかばわれたひょろりとした作業員。さらに日本人と思われる、3人の中では一番背の低い作業員。彼らの後ろに、おびえた作業員たちが10人近く控えている。
 熊男は、騎士が持っているのとは別のヒーロー武装を手にしていた。拳銃型の光線銃だ。これで監督官を射殺したらしい。
 熊男は、入ってきたヒデたちをぐるりとにらみつけ、低い声で言った。
 「てめえら、何者(なにもん)だ。クリスティアの騎士じゃねえな」
 熊男は30歳代の日本人らしい。身長はハッカイに匹敵する大男で、髪と無精ひげが伸び放題。目つきも体格もいかつく、銃の構え方にもすきがない。まるで時代劇に出てくる野武士のような迫力を備えている。
 ヒデは正直に言った。
 「私たちはエトフォルテです。リルラピス王女様に協力して、採掘場の人たちを助けに来ました」
 熊男が目を丸くする。
 「エト……?なんだそりゃ?」
 ひょろり作業員たちも不思議そうにしている。
 この人たちは、エトフォルテを知らないのか?
 このままでは話を進められない。
 すると、ジューンが前に出た。ジャケットのフードと防毒マスクを外し、作業員たちに素顔をさらす。
 熊男が目を見張る。
 「あんた。大江戸TVに出てたジューン・カワグチに似てるな」
 ジューンがひるまず言う。
 「そのジューン・カワグチです」
 熊男が疑わし気にいう。
 「決め台詞を英語で言ってみろ」
 咳払いしたジューン、笑顔で言う。
 「Have a beautiful day(ハバァビューティフルデイ)!!」
 ひょろり男と小男が驚いた表情を見せる。ひょろり男が微笑む。
 「わあ。本物だあ。私ファンです」
 小男がツッコむ。
 「ヒョロさん、今言わんでも。仮面の人たちは誰ですか?」
 ここは、ジューンに説明を任せたほうがいいだろう。
 ヒデが促すと、ジューンは作業員たちに説明する。
 「私はスターライトネットワークの特別取材でここに乗り込みました。この人たちはリルラピス王女様の仲間で、信用できる人たちです」
 小男がぎょっとなり、ムーコたち十二兵団の姿を見て疑わし気にいう。
 「ええ!?あんたのそばの……よく見りゃ獣人じゃないか。獣人は悪い奴じゃ……」
 小男が、熊男に言う。
 「ハンジはどう思うよ」
 熊男はハンジ、というらしい。
 例によって『獣人は残虐論』が展開されようとしている。この状況でムーコたちを残虐呼ばわりされ、ハンジに銃を撃たれでもしたらたまらない。
 ヒデがフォローに入る前に、ハンジが答える。
 「いい獣人もいるさ。ジューン・カワグチも信じてる。助けてくれるなら、ありがてえ。みんなで一緒に頑張って脱出しよう」
 小男はハンジの言葉に心底意外そうな顔をし、気を取り直してムーコに言う。
 「あんたたちを悪く言ってすまん。何でも手伝うんで、俺たちを助けてください」
 ムーコが仮面を外して、丁寧に言う。
 「こちらこそ。負傷者を運びたいので、案内をお願いしていいですか?」
 「そりゃあもう。何でもやるよ。あ、戦いは無理だけど」
 ほかの作業員たちも、次々と助力を申し出る。敵対せずに済んだので、ヒデはほっとした。
 その後ハンジと二、三の会話を交わすうちに、宿舎に残っていた彼らはスキを見て宿舎奥の倉庫に向かい、扉を工具でこじ開け銃を持ち出した、とわかった。宿舎内の監督官と騎士は、いつの間にか斬られて死んでいたから、とも。
 潜入したアルとウィリアムたちが、こちらの突入に備え宿舎内の監督官たちを始末したのだ。
 「武器が欲しいなら、まだあるぞ。オレンジ色の壁の倉庫だ。行ってみるといい」
 ヒデは十二兵団の仲間と話して決めた。最優先は作業員の救助。だが、役立ちそうな物があれば持ち出そう、と。巴は爆薬もあると言っていた。きっと役に立つ。
 作業員の中には、外に連れ出されなかったクリスティア騎士もいる。こちらの騎士が事情を説明すると納得して、手伝うと言ってくれた。
 作業員たちの助力も得て、まきな、アル、ムーコは作業員を保護するために動き出す。同行する団員と騎士たちは車両と武器の確保だ。
 ハンジは団員たちに同行し、持ち出す武器の選別を手伝うことになった。ハンジには武器の知識があるらしい。いったい何者なのだろう。いろいろ気になるが、彼の立ち居振る舞いに敵意は感じられない。ヒデはハンジを信じて、任せることにした。


 そしてヒデは、ジューンと一緒に監督官たちの事務室に向かった。
 こちらにとって大事な物を確保しなければならない。それは、強制労働の証拠になる資料だ。監督官は採掘場の状況をユメカム本社に報告するため、日本語で資料を作るだろう。ユメカムの悪行を告発する証拠にできる。
 宿舎の外では、激しい銃声、打撃音、魔術の発動音が絶え間なく続いている。監督官やブロン派の騎士がいつなだれ込んでくるかわからない。流れ弾も飛んでくるかもしれない。
 急がなくては。
 事務室は日本でもよく見かける事務机やキャビネットを並べたシンプルなもの。壁にはスローガン『みんなの夢をお守りします。夢よカムカム、ユメカムコーポレーション』が書かれた額縁が飾られている。
 机の上にはノートパソコンが置かれている。幸い、起動中のノートパソコンがあった。ヒデとジューンは早速ディスプレイをのぞき込む。本社宛報告書、という文書ファイルが開いていたので読んでみる。

 『……クリスティウム採掘場の拡大に伴い、さらに作業員を集める必要あり。ブロン王が捕らえたリルラピス王女の部下は反抗心が強く、脱走を試みるなど厄介。クリスティア人は拘束具で魔術を封じても素の身体能力が高いため、殺処分に手間がかかる』

 『……作業員として最適なのは、やはり日本人の農家や大工など。作業機械の扱いに長け、少し脅せばおとなしくなるため、作業力としてかかせない。さらなる補充を要望する。とはいえ、試験農場はブロン王も気に入っているので、農場からこれ以上作業員を調達するのは無理がある』

 『……本社人材部においては、これからも日本国内の提携企業に協力を仰ぎ、農場や建設現場での高収入作業をうたった偽広告で、作業員をもっと集めていただきたい』

 ヒデは驚きと怒りのあまり、思わず口にする。
 「これからも……だって!」
 ユメカムは、農場から作業員を連れ出すだけではない。すでに日本国内で偽広告を使い、クリスティア王国で強制労働させる日本人を集めていた、ということか。でなければ『これからも』なんて書かない。
 怒りのあまり、ノートパソコンを叩きたくなる衝動になったが、なんとか耐える。
 隣にいるジューンが、英語で何かを言った。早すぎてヒデには聞き取れなかったが、表情から察するに監督官への怒りを、かなりきつい英語で毒づいたようだ。
 ふう、とため息をついて、ジューンが表情を冷静に取り繕う。
 「私がこのノートパソコンから事務用サーバーにアクセスして、データをダウンロードするわ」
 この宿舎には、コンピューターのデータを管理する二種類のサーバーがある。採掘場を守る警備ロボや防犯カメラを制御管理する警備用と、監督官たちの事務仕事用だ。これは、事前に潜入したアルからの報告でわかっていた。警備用はすでにアルがコンピューターウィルスで使用不能にした。
 「では僕は、紙の資料を」
 ヒデとジューンは役割を分担し、資料捜索を始めた。


 ヒデは就職してからずっと町内会の書記と会計を任されていた。10年近くやったおかげで、書類管理には自信がある。監督官は手書きの記録を必ず作って残すはず。
 開始から3分もたたないうちに、ヒデは手書きの作業日報や作業員の体調管理記録をキャビネットから探り当てた。
 書類の中には、逃げようとした作業員をこんな風に殺した、とか、体調を崩した作業員にロクな治療も施さぬまま死なせた、など、目を覆わんばかりの日本語が並んでいる。
 さらに腹立たしいのは、文章に作業員の死を楽しんでいる節さえ見受けられることだ。
 何が『みんなの夢をお守りします』だ。本当の悪夢をばらまいておきながら。
 事務室の壁に飾られたユメカムのスローガンをにらみ、ヒデはある“もしも”を思う。


 もしも、エトフォルテが墜落しなければ。
 もしも、ヒーローによる風評被害がなければ。
 孝洋は復興支援を志願して、ここで殺されていたかもしれない。そう思うと、ヒデの中で再び怒りが燃え上がる。みんな大切な仲間だけれど、地元が比較的近く、魚料理が得意な孝洋はヒデと話がよく合った。いつも朗らかで、魚料理に関する技術と知識はヒデ以上。孝洋は宇宙船エトフォルテでできた、同郷の大切な友人だ。
 何よりユメカムは、孝洋だけではない。クリスティア王国復興を志していた日本人の願いを、バルテス国王やリルラピス王女が抱いていた日本人への信頼を踏みにじった。
 これだけの横暴を、ユメカム一社だけで隠しきれるわけがない。日本政府やヒーロー庁も関わっているのは、もはや疑いようがない。
 なぜ彼らは、ここまでできるんだ。こんなにもひどい真似を。
 静かに怒りを燃やしながら、ヒデは証拠となる資料を探し続けた。


 

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