エトフォルテ防衛戦線ヒデ! 第62話 採掘場解放戦~六対四で構成される前向きな感情~

 エトフォルテに参加してしばらくした頃。
 アルは孝洋と、エトフォルテ船内の射撃場で話し合っていた。

 現在の地球において等身大の人型ロボは、主に欧米で戦場や工事現場で頻繁に使われている。民間企業による開発も目覚ましい。人型ロボを作る技術が、義足や義手をはじめとした義肢の開発にも転用されている。
 同時に、人肌に極めて近い柔らかな人工皮膚や人工筋肉も開発され、義肢開発は飛躍的な進歩を遂げている。これらを応用することで、人間同然の体つきと肌の柔らかさを持つロボットも開発可能となった。こうした“柔らかい”ロボは現在、欧米の介護・医療現場で少しずつ普及している。
 少しずつ普及、というのは、戦闘・工事用ロボと“柔らかい”ロボの思考をつかさどる人工知能に、決定的な違いがあるからだ。
 前者は、戦闘なら戦闘、工事なら工事のためのプログラムがすでに体系化されていて、プログラムに沿って行動する。それ以外のことは、やらない。会話機能があっても、プログラムに不要な会話は、しない。
 一方後者は、人間を相手にするため、“思いやり”や“優しさ”を学ぶ、人間の脳に似た学習機能を持っている。つまり、人の感情を学び、己も感情を、つまり”心”をもつことができるのだ。“柔らかい”ロボは介護・医療技術を瞬時に修得することはできても、感情を一定以上学ぶまでは現場で働くことができない。感情教育には時間がかかるから、普及は戦闘・工事用ロボよりも遅れている。

 アルに搭載されている人工知能は、義肢開発の留学中にまきながアメリカ人の恩師(義肢開発者にしてロボット開発者)からもらった、“柔らかい”ロボのためのもの。この恩師は介護・医療ロボ開発の先駆者で、常々こう語っていたという。

 『人と一緒に介護・医療行為に従事するロボは、相手の感情、気持ちを人同様に知らねばならぬ』
 『だから人は、人工知能を育成するとき、家族や友達と接するような気持ちで育成するべきだ』
 『となると、彼らの人工知能は機械としての長所に特化するだけでなく、人間に似た思考回路、イコール”心”を持つことが望ましい』

 と、まきなはアルの人工知能育成の過程で話してくれた。ちなみに、まきなの日本での恩師も似たようなことを言っていたらしい。日本人の恩師は中学時代の担任で、国語兼生活指導の先生だそうだ。
 留学中、まきなはアルの人工知能にいろんなことを語っていた。子供の頃の思い出や、アメリカで知り合ったジューン・カワグチのことを。
 あの頃のアルは人工知能搭載のデバイスで、まきなとはパソコンを介して話すことしかできない、声だけの存在だった。


 一方日本では、ヒーロー庁やヒーロー支援企業がロボ開発技術を独占し、怪物退治や警備用のロボをこれでもか、という勢いで武装をてんこ盛りにして開発している。さらに日本の場合、ヒーロー専用兵器として変形機構や強力な武器を積み、とにかく大きい機体を作る傾向が強かった。
 これらのロボの人工知能に、感情を学ぶための機能は、無い。介護・医療用の“柔らかい”ロボの導入を望む声は国内でも少なくなかったが、ヒーロー庁も天下英雄党も聞く耳を持たぬようだった。
 そんな日本で、アルの体は造られた。
 ヒーロー庁の首都防衛対策部長、七星篤人はまきなにこう言った。
 あなたが育ててきた人工知能を“柔らかい戦闘ロボ”に搭載してみないか。既存のヒーローにはできない戦い方をする、今までにないロボを、ヒーローを作ってみないか、と。
 「ヒーロー庁主導で生まれた人型ロボット『自律思考型戦闘用機動人形(バトルアイドール)』が人助けで活躍すれば、国産の義肢だけでなく“柔らかいロボ”開発のはずみにもなる」
 「ロボは、ヒーロー庁との契約活動期間が終わったらあなたに所有権ごと譲渡する」
 七星はまきなをそう説得した。
 まきなは、アルを戦闘用にすることをかなり悩んでいた。アメリカにいた時分軍用義肢の開発もしていたから、戦闘用ロボに関する知識は持っている。が、それとアルを戦闘用にするのは話が別。
 当のアルは、悩みというものを知らない。自分はまきなの所有物で、人工知能だ。所有者の助けになるために行動するのが、人工知能の役割。だから、自分が戦闘用ロボになることをためらわなかった。
 『博士。私をバトルアイドールにしてください。人の形を取れれば、もっと博士のお役に立てます。私は博士と、この国の義肢開発の手伝いがしたいです』
 それからの3年間。少しずつアルの機械の体が作られていった。
 まきなの顔をベースに、妹のような感じに作られていく。まきなには専用の研究室が与えられ、特権待遇で彼女の好きなように作業することが認められていた。
 「一人っ子だから妹がいたらいいな、と思ったの」
 まきなは自分の顔をベースにした理由を教えてくれた。さらに、いろんなことを教えてくれた
 ヒーロー庁のリクエストによる戦闘技術や電子戦術だけでなく、人間の強さ。弱さ。美しさ。醜さ。医学知識。まきなが学んできたすべてを。
 「私たちが一緒に生きる世界を、知ってほしい。アルには、人間を信じてほしいと思ってる。嫌な人もいるけど、好きな人もいっぱいいる。この世界の、人間のぬくもりと愛おしさを」
 誰かのために頑張るとき、人のぬくもりが力に変わる。アルにもそのぬくもりを信じてほしい。きっとそれが、人間としてもヒーローとしても必要なことだから。まきなはよく言っていた。
 だが、ヒーロー庁はまきなをだましていた。
 まきなを襲い、アルを言論封殺の道具にしようとしたのだ。
 アルは人間の、ヒーロー庁の恐ろしさを知った。
 そして宇宙人エトフォルテの船に乗り、新たな日本人と出会った。
 まきなが信じる人たちのことを知りたい。共に戦い、まきなを守るために。
 アルは時間ができると、エトフォルテ人だけでなく日本人の仲間とも話すようになった。


 この日孝洋と話した場所は、技の部が管理している長距離射撃場。ここは約300メートル先に設けた大小さまざまな的を、ひたすら撃っていく構造になっている。
 孝洋は射撃の腕を見込まれ、狙撃銃を支給されていた。アルが話しかけた時、孝洋は大小6つの的のど真ん中を撃ち抜いていた。
 二人きりで話すのは、これが初めて。アルは最初に、謝るべきだと考えた。
 「初めて会った時のことを、謝りたいのです。『缶詰工場というステータスは、戦術面にアドバンテージを見出せるか』と、あなたに言ったことを」
 「あはは。そういえばそんなこともあったねえ」
 孝洋は笑っている。仲間になった日本人の中ではよく笑うほうで、孝洋はいつでもだれにでも朗らかに話しかけることが多い。
 「気にしてないよ。アルは当然のことを言ったんだから。実際、戦力的にアドバンテージが一番無いの、俺だし」
 「そうでしょうか」
 「そりゃそうでしょ。ヒデさんは軍師。威蔵は神剣組。マティウスは武装デザイナー。博士は医者でアルは戦闘ロボ。俺は缶詰 工場の息子。ほら。肩書の時点で戦術アドバンテージ、ゼロ」
 「ヒデも、もとは蕎麦屋です」
 「どこでどう学んだか知らないけど、ヒデさんの軍師ぶりは本物だよ。とにかくヒーローを倒すことを本気で考えてる。俺はあそこまで深く考えたことがない。あれは、常日頃戦いのことを考えなきゃできないことだよ。俺もヒーローむかついてたけど、ゲーセンでゾンビを撃って、憂さ晴らしするくらいしかできなかった。玉飛ばしだけの男さ」
 その『玉飛ばし』において、孝洋は威蔵も認めた戦術的アドバンテージを持っている。つまり、射撃の才能だ。
 「あなたには、射撃の才能、アドバンテージがあります。どうやって学んだのですか」
 アルが聞くと、こんな答えが返ってきた。
 「うちの工場にいた、サッカーの先生から」
 「サッカーの先生が射撃術を?」
 「教えてもらったのは玉の狙いの定め方と飛ばし方。どんなに疲れていても集中力を切らさないための呼吸法とか。俺の射撃はその延長でやっている」
 「どんな先生だったのですか?」
 「知りたいか?」
 「知りたいです」
 「教えますよ」
 「ありがとうございます」
 「……ヒデの真似ですか?とは言わないんだねえ。まあいいや」
 孝洋の苦笑いが理解できなかったが、とにかくアルは、昔話を聞くことになった。


 「先生は南米出身のカルロス、って人でさあ」
 カルロスは昔負った傷のせいで長時間の肉体労働ができず、工場では軽作業をしていた。そして、まだ幼かった孝洋の面倒を見ていた。
 「南米はサッカーが強い。カルロスは結構有名な選手だったらしい。工場の裏にパイプを組んでサッカーゴール作って、サッカーを教えてくれたんだよ」
 カルロスの教えはこうだ。
 『素早く狙いを絞り、確実に玉を狙いどおりに撃ちこめ。常に前向きな感情だけを玉に乗せろ』
 『玉に感情を込めると、それだけ玉は狙いに向かって、前に強く伸びていく。だから、前向きな感情を絶やすな』
 そのために必要な呼吸法や足運びも教えてくれたという。
 アルはサッカーに関する知識を人工知能から引き出し、孝洋に問う。
 「サッカーでは、バックパスで後ろにボールを放つこともあるのでは?」
 「そういうときでも、仲間にきちんと届かせる!って前向きな感情を込めることが大事。玉は後ろ向きでも、感情は前向きに」
 アルの知識としては、前向きな感情というのは「楽しい」「嬉しい」という類のもの。スポーツはともかく、戦場にはそぐわない感情ではないか。
 その点を指摘すると、孝洋は考え込む。
 「たしかに殺し合いの場で銃弾に『楽しい』『嬉しい』はこめられないなあ」
 「では孝洋は、具体的にどんな『前向きな感情』を込めているのです」
 「うーん。『俺の銃弾で、エトフォルテの仲間を助けるぞ、だから絶対外さないぞ』って感情。言い換えると『覚悟』かな」
 「覚悟、は感情と言えるでしょうか」
 「おお。いい質問だねえ」
 孝洋は腕組みして、首をひねる。
 「俺の場合、この覚悟は『怒り』に近い感情だね。だって怒りたくならない?有無を言わさずヒーローがエトフォルテの人たちを襲って、得意げにふるまってる。それを天下英雄党とヒーロー庁が認めてる。許せないよね」
 許せない、という点については、アルも同意見だ。ヒーロー庁は自分を言論封殺の道具にしようと、刺客を送りまきなから無理やり引きはがそうとした。
 あの時、自分の人工知能が感じた攻撃的な思考プロセスを、アルは記録している。今思えば、あれは間違いなく『怒り』だった。
 「そうですね。ヒーロー庁の振る舞いは許せません」
 アルの言葉に、力強く頷く孝洋。
 「本当に許せない。日本のヒーローは大切なものを奪って、消して、威張り散らしているんだからな。俺の思い出だって……」
 「思い出。実家の風評被害のことですか」
 「それもあるけど……」
 孝洋はごまかすように笑って、話を戻す。
 「とにかく、俺が銃弾に込めている前向きな感情の六割くらいは『怒り』じゃあないかな」
 「残りの四割は?」
 「ドラクロー団長やヒデさんたち、仲間への『思いやり』あるいは『優しさ』だね。自分の感情だけで、チームプレイは成立しない、ってカルロスも言ってた。みんなのことを考えながら戦わなきゃ。俺、怒りまき散らすために生きてるわけじゃないからね」
 「……つまり、孝洋の放つ玉は、怒りと優しさ六対四でできている、と」
 しばしの後。
 「あはは。アルは感情を、風邪薬のCMみたいに分析するねえ」
 孝洋の笑いが、アルには理解できなかった。
 「私、ギャグを言ったつもりはありません」
 「ごめんごめん。ギャグを笑ったんじゃあない。前向きな感情をこめているつもりだったけど、俺、感情の中身を口にして考えたこと、なかったからさ。こういう考え方は大事だなあ、という驚きと喜びでつい笑っちゃった。ありがとう、アル」
 そう言いつつ、孝洋が狙撃銃を的に向かって構える。
 「前向きな感情を弾丸に込めて飛ばして戦う。それが、みんなを守るために俺にできることなんだ」
 放たれた弾丸は、再び的のど真ん中を貫通した。
 孝洋の射撃能力は本物だと、アルは確信する。彼の能力を支えているのが、怒り六割と優しさ四割で構成される前向きな感情なのだ。
 『前向きな感情』に対する考察は、アルの思考回路に深く刻まれた。


 みんなを守るために、できることをする。
 機械のこの身に、怒り六割と優しさ四割で構成される前向きな感情をこめて。
 機械の私にしか、できないことを。


 だから、久見月巴を味方にできた時、彼女に同行して採掘場の宿舎に入ることを、アルは昨日の作戦会議で志願した。
 まきなには止められた。アルはまきなを守るために行動する。まきなの意見が、ロボットとしての己の行動の優先順位を決める。ロボットとしては、まきなに従うべきだろう。
 だが、『私』としては、どうしても行動したかった。
 まきなは心配そうな顔を崩さない。
 「あなたを一人きりで、長時間敵の中に放置するなんて……」
 そこにウィリアムが口笛を吹く。
 「なかなか度胸のあるロボさんだ。気に入ったよ。僕も協力する」
 ウィリアムが、さらなる作戦を提案する。
 「軍師ヒデ。巴を仲間にしたら、ロボさん“だけ”が中に入る、と言うんだ。宿舎に戻る二人の後ろに、『蜃気楼のマント』を身に着けた僕と仲間がついていく。うまいこと宿舎の倉庫かどこかに身を隠すよ」
 光学迷彩を発動する魔術武装『蜃気楼のマント』。これをまとうと、周囲の景色に溶け込んで、魔力を流している間は姿を消せる。ウィリアムと、彼が選抜した精鋭3人が、これを着て巴とアルのあとに続く、というわけだ。
 さらにウィリアムは、皆に言った。
 「もし巴が裏切るそぶりを見せたら、ロボさんを避難させて、始末は僕がつける。不意を突けば、神器の所有者と言えど殺せる。ロボさんにやらせるのは忍びない。王女様。ドラクロー団長。軍師ヒデ。いいね?」
 アレックスが反論する。
 「ウィリー。巴はきっと信用できるよ」
 「アーリィ。万が一巴が裏切ったら、作業員も僕たちも危険にさらされる。それだけは、闇討ちをしてでも阻止しなきゃいけない。違うか」
 アレックスが気まずげに、そして悲しげに言った。
 「うう……。違わない」
 もちろん巴が信用できるとわかったら、始末はしない。ウィリアムとリルラピスたちは、作戦方針を決定した。
 

 そして今。
 採掘場におけるユメカム絶対優勢の雰囲気は、アルとウィリアムたちの乱入により塗り替えられた。
 実戦テストのために魔術武装を渡された作業員の騎士たちは、味方の乱入を知るや否や、武器を手に猛然と監督官たちに襲い掛かる。ウィリアムたちは魔術弓を乱射し、屋根の上から次々に敵を射殺していく。
 恐れをなしたらしく、3機あったヘリの1号機と2号機が飛び立ってしまった。残る3号機は、なぜかそのまま。
 採掘場周囲の山に潜伏していたリルラピスとドラクローたちが、山を出て一斉に採掘場に突入する。周囲を守るロボたちは、アルが仕掛けたコンピューターウィルスで行動不能となり、案山子のごとく突っ立つのみであった。


 乱戦の中、アルはフェアリン・ジーニアスに、2WAYビームレイピアで斬りかかる。
 宿舎に潜伏するため、持ち込めた武装はバトルスーツとビームレイピア、拳銃のみ。最低限だが、それでもアルに不安はない。
 前向きな感情が、人間そっくりの機械の体を力強く突き動かす。
 素早く振ったビームレイピアの刃が、ジーニアスの頬をかすめる。頬は、斬れていない。
 アルの人工知能は、先ほど監督官を突き殺した以上の出力を出さねば、フェアリンの体を覆う不可視の防護膜アブゾーバーを突き破れない、と瞬時に判断する。
 「出力増大、行きます!!」
 ビームレイピアと全身の出力をアップさせ、ジーニアスを真っ向から斬りに行く。
 斬りかかるアルの両腕を、ジーニアスがつかみ受け止める。
 アルは腕に力を込めて、ビームレイピアを振り下ろそうとする。が、ジーニアスの力も強い。次第にジーニアスが腕を押し返してきた。
 機械でできた腕関節に軋みを感じる。これ以上ジーニアスの力が増したら、腕を壊されるかもしれない。
 腕の軋みをジーニアスも感じ取ったのか、愉快に笑う。
 「ねえ折れそう?折るよ、壊すよ、その腕を!!」
 「く…っ!!」
 もはや腕を押し込むのも、つかみから逃れるのも不可能だった。ジーニアスのほうが、アルより腕力が強い!逃れられない!
 これ以上力を加えられたら、腕を壊され戦闘不能になる!
 ジーニアスが笑みを浮かべる。魔法少女フェアリンのイメージを壊しかねないほど、好戦的で残忍な笑みを。アルの知る限り、この表情は極悪人のものであった。
 極悪人と化した魔法少女はカウントを始める。
 「いち、にの、さん、で腕を壊してあげる!いーち!にーの!!さんっ!!!」
 「ドラアアアアアッ!!」
 プロレスラーの決め台詞のごときタイミングで乱入し、熱風をまといジーニアスを殴り飛ばした者がいる。
 殴り飛ばしたのは、仮面をつけたドラクロー。包囲していた仲間たちが、監督官たちの迎撃をかいくぐり、宿舎まで到達したのだ。
 「アル!大丈夫か!」
 ドラクローの問いかけに、アルの人工知能は現状を瞬時にはじき出す。乱入の勢いで倒れはしたが、それ自体にダメージはない。
 「腕関節の損傷は軽微。戦闘行為、続行可能です」
 「そうか。お前とウィリアムたちのおかげでここまで来られた。アルはヒデと博士たちのほうに回って、宿舎にいる作業員を守ってくれ。頼むぞ」
 そう言って、手を差し出すドラクロー。アルも手を差し出し、握って立ち上がる。
 人間には、機械の自分が持ちえないぬくもり、熱さがある。ドラクローの手は大きくて力強くて、熱い。以前触れたジャンヌやムーコにはない、ごつごつとした力強さが頼もしい。
 ぬくもりが、人を守る力に変わる。まきなが教えてくれた。アルはまきなが信じる人たちが好きだ。彼らのぬくもりが好きだ。温かさが、熱さが、自分の前向きな感情を突き動かす、説明不能だけど間違いなく存在するエネルギーに変わるのだ。
 こういう状況でなければ、人工知能が満足するまでドラクローの力強い手をにぎにぎしたいところ。
 もちろんそんなことはせず、アルは体勢を整える。
 「では同志。博士たちの護衛任務に移行します」
 「任せた!!」


 

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